つんどく君のつまみ読み

何冊もの本を床に積み上げて、同時並行で少しずつ読んでいます。印象に残った言葉などを記録していきます。

『脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか』(紺野大地・池谷裕二著、講談社、2021年)

・2020年から内閣府主導で始まったプロジェクト「身体的能力と知覚能力の拡張による身体の制約からの解放」では、脳と機械を直結させるBMIブレイン・マシン・インターフェース)研究を通じて、「2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現する」という非常に野心的な目標を掲げている。

・「脳チップ移植」・「脳AI融合」・「インターネット脳」・「脳脳融合」といった、SFのような研究が実際に進められている。

 

脳や人工知能の研究は、一体どこまで進んでいくのか…。興味深い一方で、恐ろしさも感じる。

 

 

『高校生からの読書大全』(齋藤孝著、東京堂出版、2022年)

・本とは、優れた先人たちが言葉により思考し、形成した精神の世界を、言葉により描出した世界。私たちはその本を読むことによって、先人たちの思考を自分の血肉としていく。

・さまざまなジャンルの本を読み、読書体験を積み重ねていけばいくほど、“精神の森”が豊かに広がっていく。

・本には人格がある。10冊読めば10人、100冊読めば100人、1000冊読めば1000人の“人格者”が自分を応援してくれる。人生の味方が増えていく。

・15ジャンル・180冊の「出会って欲しい本」が紹介されている。

・『罪と罰』…並の小説を100冊読むより、この名作1冊を読むことをすすめる。人間の心の動きや心の闇に対する理解が深まる。

『思考の整理学』(外山滋比古著、ちくま文庫、1986年)

・昔の塾や道場では、すぐに教えない。秘術は秘す。漢文を素読し、意味は教えない。→学習意欲が高まる。

・いまの学校は教える側が積極的すぎる。親切すぎる。→学習者を受け身にする。

・既存の知識は、編集によって、新しい、まったく違った価値のあるものにすることができる。

・一見、とうていいっしょにできないような異質な考えを結合させると、奇想天外な考えになることがある。

・思考の整理とは、いかにうまく忘れるか、である。→睡眠・場所を変える・別の活動をする・汗を流す・散歩

・ほんとに興味のあることは忘れない。

・三上・三中(いい考えが浮かぶところ)

 馬上(通勤電車)・枕上(寝起き)・厠上(トイレ)

 無我夢中・散歩中・入浴中

『生きる哲学』(若松英輔著、文春新書、2014年)

『生きがいについて』(神谷美恵子著)からの次の引用に、心を動かされるものを感じる。

「君は決して無用者ではないのだ。君にはどうしても生きていてもらわなければ困る。君でなくてはできないことがあるのだ。ほら、ここに君の手を、君の存在を、持っているものがある。  もしこういうよびかけがなんらかの「出会い」を通して、彼の心にまっすぐ響いてくるならば、彼はハッとめざめて、全身でその声をうけとめるであろう。」

「生きがい」の根幹は、他者から必要とされることだと神谷は言うのである。

 

また、同じく『生きがいについて』からの次の引用にも心をつかまれる。

「平穏無事なくらしにめぐまれている者にとっては思い浮かべることさえむつかしいかも知れないが、世のなかには、毎朝目がさめるとその目ざめるということがおそろしくてたまらないひとがあちこちにいる。ああ今日もまた一日を生きて行かなければならないのだという考えに打ちのめされ、起き出す力も出て来ないひとたちである。たとえば治りにくい病気にかかっているひと、最愛の者をうしなったひと、自分のすべてを賭けた仕事や理想に挫折したひと、罪を犯した自分をもてあましているひと、ひとり人生の裏通りを歩いているようなひとなど。」

 

『生きがいについて』は、一度じっくり読んでみたいと思う。

『プルーストとイカ』(メアリアン・ウルフ著、インターシフト、2008年)

プルーストは読書を、人間が本来ならば遭遇することも理解することもなく終わってしまう幾千もの現実に触れることのできる、一種の知的“聖域”と考えていた。これらの初めて触れた現実は、どれも読者がアームチェアにくつろいだままで、その知的生活を一変させる力を秘めているというのである。」(p.20)

 

読書の醍醐味がうまく表現された言葉だと思う。

『青春漂流』(立花隆著、講談社文庫、1998年)

「誰かに強いられてするのではなくて、自由に自分の発意でする労働、何らかの欲求を抑圧しながらする労働ではなく、欲求を満足させるための労働、自分の能力を発見できることに喜びを感じられる労働、そういう遊びか労働かわからないような自由な労働の中にユートピアがある」(p.32~33)

 

理想的な働き方を示してくれている言葉だと感じた。

『本を読めなくなった人のための読書論』(若松英輔著、亜紀書房、2019年)

 文章自体が読みやすく、レイアウト的にもゆったりスペースが取られていて、とても読みやすい本だった。今の自分に合っていると感じた。心に響く言葉が多かった。

 

<印象に残った言葉>

・まず、あせるのをやめましょう。あせることが「読める」ようになることを邪魔する。むしろ、時間をかけて「たしか」にできるようになることだけが大切。言葉は、多く読むことよりも、深く感じることの方に圧倒的な意味がある。(p.49)

・読むべきときに読むべきものが読めたとき、私たちはほんの数行でも、あるいは、たった一つの言葉によってでも人生を変えられる、という経験に遭遇します。(p.67~68)

・私たちに求められているのは、速く、多く言葉を読むことではありません。今、ほんとうに必要なコトバ(豊かな不可視な「意味」を含んだもの)に出会うことなのです。(p.72)

・言葉は、人の見方や考え方を変えるちからをもっているだけではありません。ときとして世界そのものの意味を変革させるほどの威力をもっています。(p.74)

・言葉は薬草にもなる。言葉は植物と似ている。漢方薬のように、心の傷を癒し、生命力を回復させることもある。(p.90)

・人がよいと言ったものではなく、自分がほんとうに必要だと感じたものを必要なときに手にする。その言葉は、たった一行の、あるいは一つの言葉である場合も少なくない。(p.91~92)

・できるだけゆっくり読む。ただ、言葉と向き合う。(p.142)